プロジェクト
ムサビ生が書く!長浜滞在記 WEEK 2 〜宮澤果歩〜

さぁ!ムサビ生による長浜滞在記リレー、二番手は宮澤果歩さんです!!(写真中央)メンバーの中で唯一の東京出身”じゃない”彼女は、群馬県にある由緒ある和菓子屋さんの娘です。宮澤さんが東京の美大に進学し、長浜でプロジェクトをし、やがて和菓子屋さんに…?!と、先のことを見据えるのは早い気がしますが、とにかく自分のルーツを噛み締めるユニークな視点を持つ学生です!それでは、どうぞ!! 石井
長浜の皆さんはじめまして。武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科3年の宮澤果歩と申します。先週に引き続きカイコーブログ学生編を更新させていただきます!
私が「産官学連携プロジェクト」の連携先の中から長浜市を選んだ一番の理由は至ってシンプル。プロジェクト説明資料の言い回しが、私の父の文章に酷似していたからです。父は群馬県で職人兼社長として和菓子屋を営んでいます。小さい頃から粘土遊び感覚で餡子に触り、出来立てのお菓子が手から手に渡される様子を見てきた私にとって、和菓子屋は世界でありアイデンティティであると言えます。そんなお店もあと7年もすると100周年を迎えるそうで…。大学3年生になり、周囲ではボチボチ就活が始まっていくそんな中で、お店のために私も何か貢献できないかと考えるようになりました。そんな時分に、長浜での「空き家に眠る家財道具をナラティブデザインの視点からリデザインする」というプロジェクトに出会いました。このプロジェクトでは、長浜市に所在する築100年以上の古民家、通称「吉田邸」に眠っている家財道具を、ナラティブ(多角的な物語)の視点からリデザインし、未来に残していく形を思考します。このプロセスが、伝統を守りながらも新しさを拒絶しない姿勢を大切にしている父の理念と重なり、有意義な学びが得られると信じて長浜に来ることを決めました。たくさんの出会いと発見を抱えて実家に帰ろうと思います。
以下プロジェクトの経過報告になります。
9月13日。長浜に来て最初のレクチャーを終え、全員が一つの事実を察しました。それは「想像しているよりも時間がない」ということです。調べるべきことは山積みですが、兎にも角にも舞台となる吉田邸について知らないことには始まらない。ということで、手始めに吉田邸の物置に眠る家財道具を分析してみることにしました。古い箪笥やトランクを開けると、着物や掛け軸、食器に能面!!様々なものが出てきました。吉田邸を探索して発見した家財道具は平成生まれの私たちにとって目新しく新鮮なものばかりであり、その用途やルーツを探ることに夢中になりました。
その後プロジェクトの進行にあたり、元々吉田邸に住まれていたお2人に2時間のインタビューをさせていただく機会がありました。初めての形式ばったインタビューに緊張しつつも、発見した家財道具たちにどんな物語が込められているのか期待に胸が膨らみます。いざインタビューが始まり、気になった家財道具について質問をぶつけてみます。興味深い話ばかりで興奮しつつも、期待とは裏腹にどうしても確信に迫るようなナラティブ(多角的な物語)を引き出すことができません。時間は残り30分といったところ。「何か思い入れのある家具などはありましたか?」と質問したところ、少し間を置いてから「家具自体への思い入れはあまり思いつかないけれど、食卓を囲んだり、障子ガラス越しに部屋を覗いて遊んだりした時間や情景は鮮明に思い出せます。」との返答が。そこでハッとしました。私たちが探していたナラティブは、家財道具自体ではなく、それを囲んで営まれた”生活”の中に存在したのです。誰がいつどのような文脈で触れた家財道具なのか、”生活”という奥行きを意識しながら探ることは今後の活動の鍵になりそうです。
今週は吉田邸探索とその分析、さらには台風の影響もあり、うっかり作業室に篭りきりになってしまいました。次週は作業室の外へ飛び出し、様々な人に話を聞きながらリサーチに厚みを出していきたいと思います。もちろん観光も忘れずに!せっかくの長浜、存分に楽しみます。