イベントレポート

イベントレポート | 「コ・デザイン —デザインすることをみんなの手に」 著者 上平崇仁先生ミニセミナー

 

「コ・デザイン —デザインすることをみんなの手に」
著者 上平崇仁先生ミニセミナー
2022/09/09 金曜日 18:30-20:00

 

 長浜カイコー企画運営においても参考にさせていただいている「コ・デザイン」。その著者である上平先生とそのゼミ生さんたちが、フィールドワークとワークショップ開催のため長浜に来訪しました。
この機会に上平先生のお話をぜひ長浜のまちの方たちと一緒にお聴きしたい、ということでお願いしセミナー開催に至りました。

 今回のセミナーには、クリエイターや公共的なフィールドで活躍される方、学生など、様々な主体が市内・県内・県外から15名ご参加されました。

 

 セミナーは、以下のような構成でした。

1|出発点から考えてみよう

2|デザインとは?

3|いっしょにデザインするとは?

4|いくつかの事例

5|まとめ

 

 

 

1|出発点から考えてみよう


 近年注目を浴びている「デザイン」。しかし、そもそもデザインというものが何なのかが捉えられていない現状があり、またなぜ大事なのかも理解出来ていないと指摘。このデザインに対する現在の人々の向き合い方が“群盲、象を評す”という状態ではないかと説明されました。

 

 

 

2|デザインとは?


 市民のデザインに対する姿勢に対して上平先生が抱く違和感と上平先生が考えるデザインのエッセンスについて紹介されたのがこのパートです。木で出来た「孫の手」と息子がリアルに背中を掻いてくれる行為、息子が段ボールとガムテープをもとに作った「孫の手」の3つを紹介。木で出来た「孫の手」のみが、デザインだと考えられがちだが、「息子が背中をかく」と「息子が孫の手を手作りする」のあいだにデザインがあること。デザインはデザイナー以外も行うことが出来る、特権性が必要ではない行為だということ、問題発見・問題解決、意味の創出の機能があることを説明。特に、息子がリアルに背中を書いてくれる行為はデザインに見えづらいが、再現性の無いその場限りのものごともデザインの一つの側面であるといいます。体験が複製出来ない目の前にある一回限りの物事に向き合う「気づかう」行為と、体験が複製出来る「仕組みにする」行為が、相互補完的でちょうど良い関係を取り持つものがデザインだと上平先生は考えます。

 

 

 

3|いっしょにデザインするとは?


 コ・デザインとは何か、なぜコ・デザインが必要なのかを説明されたのがこのパートです。コ・デザインは、デザイナーや専門家などの限られた人々によってだけではなく、実際の利用者や利害関係者たちと積極 的にかかわりあいながらデザインを進めていこうと する取り組み・考え方。コ・デザインを行う理由を、ヒトは他者との共感を通じて社会を学ぶものだという学びのドーナッツ理論(佐伯胖)をもって説明されました。

 

 

 

4|いくつかの事例


 

 これまでにお話頂いた内容の理解を深めるいくつかの事例を紹介頂きました。

事例 URL
Field Museum Project FIELD MUSEUM展 2020

著書にも記載のある事例となります。

まちづくりに中学生が参加するデンマークの都市デザインプロジェクト Louisiana Museum | arki_lab
イワシビル イワシビル

著書にも記載のある事例となります。

山猫瓶詰研究所 山猫瓶詰研究所

【旧郵便局復活プロジェクト】山猫瓶詰研究所 | Facebook

 


 セミナー終了後も聴き足りなかった質問や疑問を上平先生に積極的に聞きにいく参加者の姿や、セミナー会場で知り合った参加者同士が交流する様子も見られました。セミナー終了後アンケートでは、上平先生のお話を各々のセクターに当てはめ、参加者独自の視点を入れた感想を入れた方々が多く寄せられました。

 

 今後も長浜カイコーでは、多様な人々の交流やセミナー、イベントを通し、現状をより良くするデザインの土壌を育むような場所を、みなさんとともに創ることが出来ればと考えております。

 

|上平崇仁(かみひら たかひと)


デザイン研究者、専修大学教授。1972年鹿児島県阿久根市生まれ。1997年筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻修了。グラフィックデザイナー、東京工芸大学芸術学部助手、コペンハーゲンIT大学インタラクションデザイン・リサーチグループ客員研究員等を経て、現在、専修大学ネットワーク情報学部教授。2000年の草創期から情報デザインの研究や実務に取り組み、情報教育界における先導者として活動する。近年は社会性や当事者性への視点を強め、デザイナーだけでは手に負えない複雑/厄介な問題に取り組むためのコ・デザインの仕組みづくりや、人類学の視点を取り入れた自律的なデザイン理論について研究している。日本デザイン学会情報デザイン研究部会幹事。大阪大学エスノグラフィラボ招聘研究員。㈱ACTANTデザインパートナー。著書に「情報デザインの教室」(丸善出版/共著)、「コ・デザイン―デザインすることをみんなの手に」(NTT出版/単著)など。

 

(レポート作成日 2022/09/12 副島拓歩)