イベントレポート
イベントレポート | 「福祉とデザイン」研究会2022 第三回「デザイナーと協働したフクションの取り組み」

長浜市が設置するデザインセンター長浜カイコーと長浜市社会福祉協議会さまが共催という形で、「福祉とデザイン」をテーマにしたセミナーシリーズ、「福祉とデザイン」研究会 2022を開催しています。第三回は、藤本 達哉さん(福井県健康福祉部障がい福祉課)と柑本 浩さん(社会福祉法人福井県セルプ)をお招きし「デザイナーと協働したフクションの取り組み」というテーマでお話頂きました。今回のセミナーには、福祉分野の最前線でご活躍される方やクリエイター、学生など、様々な方が市内・県内・県外から20名ご参加されました。
|藤本さま 柑本さまよりゲストレクチャー
まず、福井県健康福祉部障がい福祉課の藤本さんより、フクションの概要と経過をお話頂きました。障がいをもつ方の賃金向上を目指し、ひとりひとりが働く喜びを実感できる「幸せ就労」の仕組みをつくる事を目的としたフクション。施策は3つあり、1つ目は福祉事業所の商品力強化、2つ目は民間企業/ 社会の認知改革、3つ目は民間企業と福祉事業所とのマッチングです。これまでに、自然栽培のオクラを使った「オクラのとろ~りスープ」、福井県産六条大麦グラノーラを使う「麦の茶菓」、食パンに乗せて食べる羽二重餅「Have Tae TOAST」などの商品を実際に開発されています。
次に、社会福祉法人福井県セルプの柑本さんより、フクションの取り組みとして共同受注窓口でどのような仕事のマッチングをしているか、また商品開発の流れと現状の課題点について事例をもとにご紹介頂きました。福祉施設は作る側の視点があり、デザイナーは作りたいものがある中、民間企業で勤めていた柑本さんのバックグラウンドを活かしながら関わっていくということを意識していたそうです。
|グループに分かれてお話 / 質疑応答
グループに分かれ、学びの振り返りと感想の共有をした後に質疑応答の時間が設けられました。今回のセミナーに参加頂いた皆様からは、抜粋にはなりますが以下のような質問をゲストのお二人にされていました。
・デザインへの入口のハードルを下げたことで商品開発に取り掛かりやすくなるかもしれないが、商品自体にあまり魅力が無いとなった際に仕組みとしてどのように商品力を上げていくのか?
・福祉の仕事に現場のことを知らない人が関わるのはハードルの高い行為だと思うし、福祉施設の人からしてもいきなりデザイナーさんに何かを頼むというのは、何をどうしたら良いのか戸惑う。そこをどうコーディネートしたのか、双方にどのようにアプローチしたのか?
・実際クオリティを上げていく、納期を守るとなると、簡単な事ではない場面もあるはず。当事者の方々の働き方はどうだったのか?また、職員さんの負担は?
・福祉という分野はデザインが介入することが少ない領域にも関わらず、デザインの活用に舵を切っていけた理由が知りたい。
福祉をメインフィールドに活動している方だけでなく多様なバックグラウンドを持つ参加者同士が交流することを通じて新たな問いが育まれるような場になりました。
|参考
・フクション!ウェブサイト
・「行政&情報デザイン」取材記事
https://www.iais.or.jp/articles/articlesa/20220610/202206_03/
|編集後記
多様な主体が関わることで生まれる価値観の違いから生まれる主体間の境界。「福祉事業所だから」「デザイナーだから」「行政だから」「消費者だから」。ここまでその境界を曖昧にさせ、目線を揃え、一体感を持てたのはなぜなのか、今回のセミナーを通してより知りたくなりました。
レポート作成日 2022/11/29 副島拓歩